法苑珠林とは|成立・構成と史料として読む注意点(魏略逸文)

法苑珠林は唐代の仏教類書(百科)で、散逸文献の断片を多く伝えます。邪馬台国研究で参照される魏略逸文(侏儒国・女王国)を例に、引用の層・版本差・地図化の注意点を整理。

法苑珠林ほうおんじゅりんは、唐代の僧・道世が編んだ仏教系の類書(百科・抜き書き編集物)です。
邪馬台国研究では、散逸した『魏略』などの断片が「引用のかたち」で残るため、周辺情報の点検に参照されます。

ただし“歴史叙述のための正史”ではなく、引用・省略・配列替えが入り得るため、単発の一句で結論を固定しない注意が要ります。
この記事では、法苑珠林を「主軸/補助」のどこに置くか、そして読みの分岐点(論点の場所)を地図として整理します。

この記事で分かること
  • 法苑珠林の基本データ(成立・性格・巻数の数え方の揺れ)
  • 史料として読むときの注意点(引用の層/版本差/地理・里程の扱い)
  • 邪馬台国研究で参照される論点の場所(比較はせず、入口だけ示す)
目次

法苑珠林とは

法苑珠林は、仏教経典や仏教説話だけでなく、歴史書・地理書など「仏教以外の文献」も引きつつ、テーマ別に抜き書きして編んだ大型の編集書です。
そのため、邪馬台国研究では「ここだけを読めば決着がつく史料」ではなく、散逸文献の断片や用語・表現を点検する“補助線”として参照されます。

基本データ

成立・編者
著者道世(唐代の僧)
成立年総章元年(668)に成ったとされる(序文・奥書情報に基づく扱い)

仏教類書(テーマ別の抜き書き編集。引用元の混在が前提)です。

構成(巻立て)

100巻(大蔵経系)として扱われることが多い一方、四庫全書本では120巻(目録等の数え方を含む)とされるなど、版本で数え方が揺れています。

なぜ邪馬台国研究で参照されるか

ポイントは「法苑珠林そのものが倭を詳述する」より、他文献の引用断片が残るところです。
たとえば巻8付近に、次のような引用が見えます。

《魏略》曰:倭南有侏儒國其人長三四尺去女王國四千餘里

この手の一句は、
(1)用語(女王国など)の確認
(2)地理・里程表現の性格確認
(3)“魏略逸文”の所在メモ
として使われます。

史料として読むときの注意点

仏教類書(百科)であり、歴史叙述の“主軸”ではない

法苑珠林は、出来事の年代順に叙述する正史とは目的が違います。
「罪福・霊験・教化」など宗教的テーマに沿って素材を集めるため、歴史記事は“引用材料”として配置されがちです。
したがって、邪馬台国の所在地論などをこの史料単体で確定させる使い方は避け、主軸(正史・列伝類)へ戻る前提で置くのが安全です。

引用の「層」を分けて読む(誰の言葉か、どこを通ったか)

法苑珠林で目にするのは、多くが「○○曰…」という引用形です。
ここで混ぜやすいのが、以下のような“層”です。

  • 引用元(例:魏略)
  • 法苑珠林での編集(抜き書き・配列・省略)
  • さらに底本・校訂段階の揺れ(異体字・脱字)

引用句は便利ですが、結論づける前に「引用元へ戻れるか/戻れないなら戻れないと書く」を徹底します。

版本差(100巻/120巻など)で位置情報がズレる

法苑珠林は、所収形態(大蔵経・叢書・四庫全書など)によって、巻数の数え方や章段の立て方が変わります。
そのため「巻8」と言っても、別の版では巻・段の見え方がズレる可能性があります。
記事やノートを作るときは、(版)+(巻)+(章段)のセットで控えると迷子になりにくいです。

里程・地理は“直ちに地図化しない”

「去女王国四千余里」のような距離表現は、すぐ地図に落としたくなる情報です。
しかし、(1)概数表現の可能性、(2)引用過程での欠落、(3)周辺文脈(前後の国名・経路)が省略されている可能性があるため、単発の数字だけで確定線を引くと破綻します。
まずは「同じ引用がどのテキストに、どの形で残っているか」を揃えてから扱います。

関連史料との関係

主軸

邪馬台国研究での主軸は、基本的に正史・列伝類(いわゆる倭人伝系)です。
まずは 三国志(魏志倭人伝)後漢書 など、年代・編集方針が明確な史料を軸に据えます。

補助

法苑珠林は、主軸を補う“周辺チェック”に向きます。

  • 散逸文献(例:魏略)由来の断片の所在メモ
  • 用語(女王国など)の出現確認
  • 伝聞的・類型的表現(小人国・僬侥など)の混入チェック

補助線として置く場合でも、引用経路(どこから来た一句か)を併記して、混線を防ぎます。

論点マップ

法苑珠林に関して、邪馬台国研究へ接続する論点の“入口”は主に次のあたりです。

「魏略曰…」の引用経路

どの版・どの章段で、どんな編集状態で残っているかが入口になります。

「女王国」という語の扱い

語として出ること自体は手掛かりになりますが、前後文脈が省略されていないかが分岐点です。

侏儒国(小人国)を“地理情報”として扱えるか

類型表現・奇譚・地理記事が同居し得るため、史実成分と修辞成分の切り分けが必要です。

里程(四千余里)の性格

概数/伝聞/換算不能の可能性を含むため、単独で地図線を引かないのが基本線です。

版本差による「巻・段」同定のずれ

巻数の数え方(100巻/120巻など)を含め、位置情報の固定方法が論点になります。

FAQ

法苑珠林は「邪馬台国を直接説明する史料」ですか?

主に「直接説明」ではなく、他文献(例:魏略など)の断片が“引用として見える”ことが参照理由になります。
主軸は正史側に置き、法苑珠林は補助線として使うのが安全です。

原文はどこで確認できますか?

大蔵経系のテキスト(CBETA等)や、叢書(四庫全書本)などで確認できます。
ただし版によって巻数・章段が揺れるため、(版)+(巻)+(章段)のセットで控えるのがおすすめです。

参考文献・出典

NTI Reader
BDK America
国指定文化財等データベース(文化庁)
Wikipedia
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