【論衡】倭人・鬯草/暢草(異虚篇/儒増篇/超奇篇/恢国篇)|原文・現代語訳・解説

『論衡』の倭人・暢草/鬯草関連本文を原文・現代語訳で整理し、読みの注意点も解説。

本ページは『論衡』のうち、倭人関連記事が現れる(または関連づけて参照されやすい)数箇所を、原文→試訳→局所解説の順に整理したものです。

本文で確実に確認できるのは、儒増篇の「倭人貢鬯草」、恢国篇の「倭人貢暢」という文言が、周代の“天下太平/瑞物・珍物”を語る流れの中に置かれている点です。
一方で『論衡』自体は、史実を年代順に記録するための歴史書ではなく、王充が俗説や瑞祥観を論証(批判・検討)する文章です。
周代の記事は「実録」というより、議論の材料として配置される可能性があります。
また「暢/鬯/鬯草」「越裳/越常」「宛/鬱」など、字形・語形の揺れや校勘上の論点もあるため、断定を急がず“論点の場所”として整理します。

この記事で分かること
  • 倭人関連記事が『論衡』のどの篇(章)に出るか
  • 「暢/鬯草」など、短い語に集まる読みの分岐点
  • 倭研究で使うときに、危ない断定を避けるための線引き
目次

原文

字形方針:繁体に統一します。
整形方針:句読点は付けず、区切りは全角スペースで入れています(原文確認のための整形です)。

巻5 異虚篇第18

使暢草生於周之時 天下太平 人來獻暢草
暢草亦草野之物也 與彼桑谷何異
如以夷狄獻之則為吉 使暢草生於周家 肯謂之善乎
夫暢草可以熾釀 芬香暢達者 將祭 灌暢降神
設自生於周朝 與嘉禾 朱草 莢之類不殊矣

『論衡』巻5 異虚篇第18

巻8 儒増篇第26

周時天下太平 越裳獻白雉 倭人貢鬯草 食白雉服鬯草 不能除凶

『論衡』巻8 儒増篇第26

巻13 超奇篇第39

白雉貢於越 暢草獻於宛 雍州出玉 荊楊生金
珍物產於四遠 幽遼之地 未可言無奇人也

『論衡』巻13 超奇篇第39

巻19 恢國篇(本文確認:倭人貢暢)

成王之時 越常獻雉 倭人貢暢

『論衡』巻19 恢國篇

補足(字形の揺れ)
「越裳/越常」は底本(系統)によって表記揺れが見える可能性があります。
本ページでは公開DB本文の表記に従い、儒増篇は「越裳」、恢国篇は「越常」を掲げています。

現代語訳

本現代語訳は語義・文脈にもとづく試訳であり、語句の区切りや含意には複数の読みがあり得ます
(特定説に偏らないよう配慮しています)。

巻5 異虚篇第18

もし暢草が周の時代に生じたのなら、天下は太平で、人々が来て暢草を献上するだろう。
しかし暢草は野の草にすぎない。桑や穀(瑞の例)と、どこが違うのか。
夷狄(遠方の人々)が献じたから吉兆だと言うなら、暢草が周の国内に自生した場合でも“よい兆し”と言えるのだろうか。
そもそも暢草は、香りを立たせて醸し、祭祀で灌いで神を降ろす用途が語られる。
仮に周王朝の時代に自生したとしても、嘉禾・朱草・莢の類と大きく違わないはずだ。

巻8 儒増篇第26

周の時代、天下が太平であったころ、越裳えっしょうは白い雉を献じ、倭人は鬯草ちょうそうを貢いだ。
しかし白雉を食べ、鬯草を服したところで、凶事を取り除けるわけではない

巻13 超奇篇第39

白雉は越から貢がれ、暢草は宛に献じられる。雍州では玉が産し、荊・楊では金が生まれる。
珍しい品は四方の遠い地で産出する。幽・遼の地についても、「不思議な人物がいない」とは言い切れない。

巻19 恢國篇(本文確認:倭人貢暢)

成王の時代、越常は雉を献じ、倭人は「暢」を貢いだ。

史料解説

史料について

  • 『論衡』は後漢の王充による著作とされ、さまざまな説や迷信・災異説などを批判的に論じる性格が強い。
  • 今回扱う箇所は「倭人」を中心に、周代の“瑞物・珍物”や朝貢を引き合いに出す文脈に置かれている。
  • 叙述対象(周代)と著者(後漢)の間に時代差があり、同時代史料のようには扱えない(例示・論証の素材である可能性がある)。
  • 「暢草/鬯草」「宛/鬱」「越裳/越常」など、字形・語形の揺れや校注上の論点がある。

事実:この箇所の本文から言えること

  • 儒増篇には「倭人貢鬯草」という形で、倭人の献上が記されます。
  • 恢国篇には「倭人貢暢」という形で、倭人の献上が挙げられます。
  • いずれも、周代の“天下太平”や瑞物・珍物の話題に接続する文脈で出てきます。
  • 異虚篇は、暢草を瑞物視する発想そのものを、議論の材料として扱っています。
  • 超奇篇の当該文面には、「倭」字は見えません(白雉・暢草などを「四遠の珍物」として列挙する流れです)。

読みの分岐点:どこで解釈が割れるか

  • 「暢/鬯/鬯草」:同一視できるのか(表記揺れ・説明語なのか)、別物として扱うのか。
  • 「貢暢」の暢:香草(暢草)寄りに取るか、香気・香酒(鬯)方向を含めて取るか。
  • 超奇篇の位置づけ:本文に倭が明記されない箇所を、倭研究の材料として扱うか(扱うなら“仮説”として線引きが必要)。
  • 「宛」:地名として読むか、別の字義・異文(字通)を想定するかで、文の含意が変わり得ます。

注意点

  • 『論衡』は歴史叙述の書ではなく、王充が俗説・瑞祥観を検討する論証テキストです。周代の出来事を「実録」として確定する方向へ、短文から飛躍しないのが安全です。
  • とくに超奇篇は「倭」と書かれていないため、倭の行動として扱うなら、本文だけでは断定せず「可能性(仮説)」として整理してください。
  • 字形・語形(越裳/越常、暢/鬯、宛/鬱など)は、底本や校注で揺れが出ることがあります。引用時は、参照した公開DB(URL)と篇名を併記するのを推奨します。

論点メモ

  • 暢草/鬯草の関係:同一視するか否かで、本文の読み方(献上物の性格)が分岐します。
  • 「貢暢」の暢の取り方:儒増篇の「鬯草」とどう対応させるかが鍵になります。
  • 超奇篇の扱い:本文に倭字がないため、“倭関連”として読む場合は仮説の線引きが必須です。
  • 宛の意味:地名か、異文・字義の取り方かで、「遠方の珍物」理解のニュアンスが変わり得ます。

出典

Chinese Text Project(中國哲學書電子化計劃)

閲覧日:2025-12-24(JST)

維基文庫(Wikisource)
Wikimedia Commons(国立図書館系PDF:版面確認用)
ChinaKnowledge.de
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