【南斉書】倭/倭国(建元元年・倭王武の進号)|原文・現代語訳・解説

南斉書「東南夷伝」倭国条(倭王武の進号)を原文・試訳・解説で整理。論点は読みの分岐点まで示す。

南斉書『卷58 列傳第39 蠻 東南夷』に見える、倭国(倭)関連記事の当該箇所を扱います。
ここでは、倭国の位置づけ(「帯方の東南」「漢末以来の女王」)と、建元元年に記される倭王武の官号(都督・大将軍号)の文言を、原文と試訳で確認できるようにします。

確実に言えるのは、本文が「何を述べているか(記述内容)」までであり、要約句の射程や官号列挙の意味づけは読みが割れやすい点です。
そこで本ページでは、学説の勝敗は扱わず、“どこが分岐点になるか”だけを整理します。

書物全体(成立・構成・史料としての注意点)は親記事でまとめています。

この記事で分かること
  • 『宋書』に見える倭国関連記事を、章段単位で探しやすく読めます
  • 現代語訳(試訳)で大意をつかめます
  • 解釈が割れやすい“場所”だけを、局所論点として把握できます
目次

原文

字形方針:繁体に統一します。
整形方針:句読点は付けず、区切りは全角スペースで入れています(原文確認のための整形です)。

倭國 在帶方東南大海島中 漢末以來 立女王 土俗已見前史

建元元年 進新除使持節 都督倭新羅任那加羅秦韓〔慕韓〕六國諸軍事 安東大將軍 倭王武號為鎮東大將軍

『南齊書』卷58 列傳第39 蠻 東南夷(倭国条付近)

現代語訳(試訳)

※本現代語訳は語義・文脈にもとづく試訳であり、語句の区切りや含意には複数の読みがあり得ます(特定説に偏らないよう配慮しています)。

本文(倭国の位置づけ)試訳

倭国は、帯方の東南にある大海の島々の中にある。漢の末以来、女王を立ててきたという。風俗(の概要)は、すでに前の史書に見えている。

本文(建元元年・倭王武の官号)試訳

建元元年、(倭王武について)新たに官号が進められ、あらためて授けられた。
使持節とし、(倭・新羅・任那・加羅・秦韓〔慕韓〕)六国諸軍事を都督し、安東大将軍とする。倭王の武は(さらに)鎮東大将軍号と記される。

史料解説

事実(本文から言えること)

  • 倭国は「帯方の東南」「大海の島中」にある、と本文は位置づけています。
  • 「漢末以来、女王を立てた」という要約句が置かれています(これ自体が“いつの層の情報か”は本文だけでは確定しません)。
  • 建元元年に、倭王武に関する官号(使持節/都督○○諸軍事/安東大将軍/鎮東大将軍)が列挙されています。
  • 列挙される範囲には、倭以外に新羅・任那・加羅・秦韓などが含まれます(〔慕韓〕の扱いは、表示形や底本差の可能性があるため留保します)。

読みの分岐点(どこで解釈が割れるか)

  • 「漢末以來 立女王」:同時代(3世紀)情報の直接反映として扱うか、先行史料を踏まえた“要約句”として扱うか。
  • 「在帶方東南大海島中」:地理像を、島嶼の集合(列島)として強く取るか、海域の向こうという広い表現として幅を残すか。
  • 官号列挙(使持節/都督○○諸軍事/大将軍号):中国側の制度語(叙任・外交実務の言葉)として読むか、倭国内部の支配領域や軍事編制を直接示すものとして読むか。
  • 「六國」と括られる単位:列挙された国名の数え方(どこを一単位と取るか)や、〔慕韓〕の位置づけで印象が変わる。

注意点(テキスト条件:注・底本差・語形揺れ)

  • 本文が短い箇所ほど、字形や挿入(括弧表示)の有無で意味が揺れます。引用時は、参照DB名と閲覧日、巻・伝の位置情報を必ず添えてください。
  • 〔慕韓〕のように括弧付きで表示される語は、底本差・異文・補注の可能性があるため、本文と同列に断定しないのが安全です。
  • 「都督○○諸軍事」のような制度語は、現代語訳で意味を足しすぎると断定が混入しやすいです。

論点メモ(局所)

  • 【要約句の層】「漢末以来の女王」は、本文叙述のどの層に属するかで、引用の使い方が変わります(同時代の直接証言と混線させない)。
  • 【官号の射程】都督号・大将軍号を、倭側の実態記述として読むか、中国側の叙任語として読むかが分岐点です。
  • 【六国の数え方】国名列挙と「六国」の対応は、語の区切り方や括弧表示の扱いで印象が変わります。
  • 【地理像】「帯方の東南」「大海島中」を、具体的な比定に直結させる前に、表現の幅を残して押さえるのが安全です。

出典

Chinese Text Project(中國哲學書電子化計劃)
Chinese Notes
名古屋大学(東洋史学)
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